人を動かす三原則 | デール・カーネギーに学ぶ人間学



自己啓発系著書の原点とも言われる、デール・カーネギー氏の著書「人を動かす」。人が、簡単で当たり前の思考原理をいかに理解していないかを痛感できる一冊です。今回は本編より人を動かす三原則について紹介してみようと思います。
名書は人を変えるエネルギーを持つと言いますが、私が初めてにして最大のエネルギーを感じたのがこの本でした。「レバレッジ・リーディング (本田直之 著)」の文中で紹介されていて、気軽な気持ちで買った一冊だったのですが、今後の私の人生を大きく変える名書になると確信しています。このブログを愛読してくれる全ての人に紹介するべく、その一片を、非力ながら紹介させていただきます。

人を動かす三原則

この章では、人を動かすための重要な三大原則について言及されています。ただの教書ではなく、著者の長年にわたるあらゆる分野の研究と事例検証の成果であるとしています。文中には多くの事例を交え、分かりやすく人を動かす方法を説いています。

原則1 - 盗人にも五分の理を認める

他人を批判、非難することは利益がないからやめようという原則です。この原則のコアは、文中に出てくる以下の文章に要約されています。

人を非難するかわりに、相手を理解するよう努めようではないか。どいういうわけで、相手がそんなことをしでかすに至ったか、よく考えてみようではないか。そのほうがよほど得策でもあり、また、おもしろくもある。そうすれば、同情、寛容、好意も、おのずと生まれてくる。

そして、この原則は、以下に記す人間の思考の原理に基づいています。

人間はたとえ自分がどんなにまちがっていても決して自分が悪いとは思いたがらないものだ

人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばならない。

われわれは他人からの賞賛を強く望んでいる。そして、それと同じ強さで他人からの非難を恐れる。(心理学者ハンス・セリエ)

なるほど、自分に当てはめてみるとよく分かるが、ここで述べられている人間の思考の原理は的を射ていると思います。そして、人間関係でトラブルが発生する場合、ことごとくここに書かれているように、相手を論理の動物とみなして対峙していた場合が多かったように思えます。自分自身が偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するというのに、相手にそれを許容する心を持てていなかったのかもしれません。
カーネギー氏は文中で、批判、非難する行為について以下のように記しています。

他人のあら探しは、なんの役にも立たない。相手は、すぐさま防御体制をしいて、なんとか自分を正当化しようとするだろう。それに、自尊心を傷つけられた相手は、結局、反抗心をおこすことになり、まことに危険である。

批判が呼びおこす怒りは、従業員や家族・友人の意欲をそぐだけで、批判の対象とした状態は少しも改善されない。

他人の欠点を直してやろうという気持ちは、たしかに立派であり賞賛に価する。だが、どうしてまず自分の欠点を改めようとしないのだろう?他人を矯正するよりも、自分を直すほうがよほど得であり、危険も少ない。利己主義的な立場で考えれば、たしかにそうなるはずだ。

そして、理解と寛容に対しては以下のよう記している。

理解と、寛容は、すぐれた品性と克己心をそなえた人にしてはじめて持ちうる徳である。

すべてを知れば、すべてを許すことになる。

本を読みながら心が震えているのを感じました。今までいったい何人の自尊心を傷つけてきたのだろう・・。反省せざるを得ませんでした。批判された時に私が感じる痛みは、批判された相手が感じる痛みであるということを今一度認識しておかなければいけませんね。まさに、他人の欠点を直そうとする前に、自分自身を見つめなおすことが必要だと痛烈に感じました。

神様でさえ、人を裁くには、その人の死後までお待ちになる。(文学者ドクター・ジョンソン)

原則2 - 重要間を持たせる

相手の重要感を高めようという原則です。この原則のコアは、以下の文章に要約されています。

深い思いやりから出る感謝のことばをふりまきながら日々をすごす-----これが、友をつくり、人を動かす秘訣である。

ちょっとうまく本文を抜粋できませんでしたが、相手に重要感を与えることで自ら動きたくなる気持ちを喚起するということです。
そして、この原則は、以下に記す人間の思考の原理に基づいています。

人間は例外なく他人から評価を受けたいと強く望んでいるのだ。この事実を、決して忘れてはならない。

人間の持つ性質のうちでもっとも強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである。(心理学者ウィリアム・ジェームズ)

まったくもって納得の一言です。これも自分に置き換えてみることで簡単に理解できます。心からの賞賛は何ものにも変えがたい幸福感を与えてくれます。相手にとってももちろん同じことですよね。相手を観察し、よいところがあったら躊躇なく賞賛の言葉をかけてみましょう。(といっても、お世辞はいけません。文中でも心のこもっていない賞賛の言葉は相手を馬鹿にしているのと同じで、決していい結果を生み出さないとしています)

自分の長所、欲求を忘れて、他人の長所を考えようではないか。そうすれば、お世辞などはまったく無用になる。うそでない心からの賞賛を与えよう。シュワップのように、「心から賛成し、惜しみなく賛辞を与え」よう。相手は、それを、心の奥深くしまいこんで、終生忘れないだろう-----与えた本人が忘れても、受けた相手は、いつまでも忘れないでいつくしむだろう。

これは、実は簡単なことではないと思います。タイミングを見計らったり、恥ずかしがったりと、躊躇してしまうものです。、、、そんな時は以下の言葉を思い出すべし。

この道は一度しか通らない道。だから、役に立つこと、人のためになることは今すぐやろう-----先へ延ばしたり忘れたりしないように。この道は二度と通らない道だから。(古いいいつたえ)

深いですね。。いい言葉です。(書き留めて、常に目につくところに置いてあります!)

原則3 - 人の立場に身を置く

常に相手の立場に立ってものごとを考えようという原則です。この原則のコアは、以下の文章に要約されています。

人を動かす唯一の方法は、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ。これを忘れては、人を動かすことはおぼつかない。

人間の行動は、心のなかに強い欲求を起こさせることである。商売においても、家庭、学校においても、あるいは政治においても、人を動かそうとするものは、このこのをよく覚えておく必要がある。これをやれる人は、万人の支持を得ることに成功し、やれない人は、ひとりの支持者を得ることにも失敗する。(米国の心理学者オーヴァストリート教授の著書「人間の行為を支配する力」より)

そして、この原則は、以下に記す人間の思考の原理に基づいています。

自分の好物を問題にする必要がどこにあるだろう?そんなことを問題にするのは、子供じみた、ばかばかしい話だ。もちろん、われわれは、自分の好きなものに興味を持つ。生涯持ちつづけるだろう。しかし、自分以外には、だれも、そんなものに興味を持ってはくれない。だれも彼も、われわれ同様、自分のことでいっぱいなのだ。

悲しいことですが、これも納得です。人間は利己主義な動物であるという論理は真理だと思います。でも、この思考原理さえ理解しておけば、コミュニケーションにおいて、相手の関心事に深く入っていく準備ができると思います。
文中に面白い例えがありました。

わたしはイチゴミルクが大好物だが、魚は、どういうわけかミミズが好物だ。だから魚釣りをする場合、自分の好物のことは考えず、魚の好物のことを考える。イチゴミルクをえさに使わず、ミミズを針につけて魚の前に差し出し、「ひとつ、いかが」とやる。

あえてこの文章を抜粋してみましたが、どうでしょう、実に深いと思いませんか?こんな簡単な原則すら私生活に活用できていないんです。。文中に何度となく書かれていますが、常に相手の立場に立って考え、相手の関心事から目を背けないよう努めることが重要ですね。

成功に秘訣というものがあるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場からも物事を見ることができる能力である。(自動車王ヘンリー・フォード)

自己主張は人間の重要な欲求のひとつである。(ウィリアム・ウィンター)

人を説得して何かやらせようと思えば、口を開くまえに、まず自分にたずねてみることだ-----「どうすれば、そうしたくなる気持ちをあいてに起こさせることができるか?」これをやれば、自分勝手な無駄口を相手に聞かせずにすむはずだ。

最後に

今回紹介した内容は第一章のみで、ほんの一部にすぎません。この本は人の生き方そのものを変える力があると信じています。静かな場所でこの本を手にし、インクと紙の香りを感じながらページをめくり、随所に出てくる賢者の名言を心ゆくまで楽しんでみて下さい。